このブログは私の駄文を垂れ流す、結構自由な空間なつもりだが、たまには数学の話をしようと思う。しばらくは私の学部3年後期、研究室選びのときの話をする。タイトルの「エキゾチックストラクチャー」というのは、トポロジーに出てくる概念で、私の研究室選びにおいて出てくる概念でもあるが、これの数学的な説明はそのあとに行う。まずは私の研究室選びの話をする。
現在私はプロフィールでも書いているように、代数学専攻で、下元数馬先生の研究室に所属している。学部3年のときの研究室選びでも最終的に本研究室へと所属した。
(指導教員には申し訳ないが)実は、私は初めからこの研究室を志望していたわけではない。何なら第一志望ですらなかった。もっと言うと代数学専攻志望でさえなかったのである!!数学には大きく分けて「代数学」、「幾何学」、「解析学」、「応用数学」の四つに分かれると思う。私はこのうち「幾何学」を志望しており、特に4次元のトポロジーの研究室である遠藤久顕先生の研究室を第一志望としていた。どうして辞退したのかというと、一研究室当たりの受け入れ可能人数は3人であったが、私含め遠藤研への志望者は4人だったからだ。さらに、私以外の三人はどうやら仲良しに見えたし、正直に言うと自分はできた学生ではなかったし、絶対に幾何学をやりたいという強い気持ちもなかったので、これもまた運命という気持ちで諦めた。ちょうどそのころ、仲のいい友人が「下元研志望したら僕一人だった。一人ゼミはちょっとな。。。」と言っていたので、第二志望や第三志望ではなく、下元研を志望することにした、という流れだ。急遽下元先生に面談をお願いしてもらったが、とてもやさしい方で、しかも全くわからない、しかしワクワクする話題に尽きない方だった。この人の下ならやっていける、と思ってそのまま進学した。今思えば、学部の授業でちょこちょこ講義を取っていなかった中、代数だけは全部取っていたから正解だったかもしれない。
さて、なぜ私が最初に幾何学を志望していたのか、その話に欠かせないのが「エキゾチックストラクチャー」の存在である。この概念の名前のかっこよさ、そして不思議さに惹かれて、幾何学を志望していた。「エキゾチックストラクチャー」の解説を数学がよくわからない人向けに大雑把に説明する。(私は代数専門だから間違ってたらごめん。) 数学には「多様体(たようたい)」という、図形のような概念がある。微分構造など、いい性質を持った図形だと思ってくれればいい。(中身の詰まっていない殻だけの)球とか、同じくドーナツ型(トーラスと呼ばれる)とか、4,5,6など高次元のそれも数学的には扱うことがある。多様体は空間であって、しかも微分がいい感じにできる図形であるのだ。数学科向けに言い訳すると、位相空間であって適切なアトラスを備えたものだね。
2つの多様体がただ空間として「同じ」であることは「同相(どうそう)」と呼ばれる。さらに、滑らかさも加味して「同じ」であることを「微分同相(びぶんどうそう)」と呼ぶ。たいていの場合、同相と微分同相の間に区別はない。しかし、同相ではあるが、残念ながら微分同相ではない、ということがありえる。多様体$X$に対して、他の多様体$Y$であって、同相だが微分同相でないものを「エキゾチック$X$」と呼ぶ。名前かっこよくない?さて、ここでクイズです。普通の直線($\mathbb{R}^1$)とか平面($\mathbb{R}^2$)なども多様体になるんだが、「エキゾチック$\mathbb{R}^n$は存在するか?」と気になる。さすがに$\mathbb{R}^n$は行儀よさそうだから無いんじゃねえの?と思うだろう。
実際、$\mathbb{R}^1, \mathbb{R}^2, \mathbb{R}^3,$ 4を飛ばして $, \mathbb{R}^5, \mathbb{R}^6, \mathbb{R}^7, \ldots$ はエキゾチック$\mathbb{R}^n$は存在しないことが知られている。同相だったら微分同相まで言えてしまって、特に面白みがないのです。よかったよかった。。。。しかし!!なんとエキゾチック$\mathbb{R}^4$は存在することが知られているのだ!!しかも無限個も存在する。この発見の功績によりドナルドソンは1968年にフィールズ賞を受賞している。この話を学部三年の多様体の講義のときに聞いた。私が初めてフィールズ賞級の仕事の主張だけでも理解できた瞬間であった。(グリーン・タオの定理知らなかったのかよって?知らなかったのですん。。。)
こういうわけで私はもともと幾何学を志望していたのである。ちなみに、球面$S^n$に関するエキゾチックストラクチャーの存在についてはいくつかの$n$においてはいまだに未解決問題である。例えば
- $S^1, S^2, S^3$にはエキゾチックストラクチャーは存在しない。
- $S^4$にはエキゾチックストラクチャーが存在するかどうかは未解決問題である。
- $S^5, S^6$にはエキゾチックストラクチャーは存在しない。
- $S^7$にはエキゾチックストラクチャーが異なる27個存在する。
- $S^8$にはエキゾチックストラクチャーがただ一つ存在する。